事業承継とは何か?意味・読み方・現状をわかりやすく解説する

事業承継

「事業承継」という言葉は耳にしたことがあるけれど、正確な意味や第三者承継との違いをうまく説明できない——そんな経験を持つ方は少なくないはずです。

.顧問先に背景を説明する前に、自分自身の中で整理できていないというケースもあるでしょう。

この記事では、事業承継の意味・読み方・現状・種類を体系的に整理します。

事業承継とは何か、まず言葉の意味を整理する

このセクションでは、事業承継の基本的な定義を整理します。

事業承継の意味と定義をわかりやすく解説

事業承継(じぎょうしょうけい)とは、企業の経営権・資産・知識・人材・信用などを次の世代へ引き継ぎ、事業を継続させる取り組み全般を指します。

解説

「事業継承」と表記されることもありますが、現在は「事業承継」が公式的な表記として広く使われています。「継承」と「承継」の違いについては後述します。

事業承継の読み方を確認する

事業承継の正しい読み方は「じぎょうしょうけい」です。「じぎょうけいしょう」と読んでしまうケースもありますが、正式な文書や商談の場では注意が必要です。

事業承継と事業継承の違い、どちらが正しいか

実務上はどちらの表記も使われますが、中小企業庁が公式文書や政策資料で使うのは「事業承継」です。

診断士や士業が顧問先に説明する際は、「事業承継」という表記を使う方が自然です。

承継と継承の違いについて

「継承」は、先代から受け継いだものをそのまま引き継ぐニュアンスが強い言葉です。

一方で「承継」は、権利・義務・地位などを引き受ける意味合いがあり、法律や実務の場面でよく使われます。

事業承継では、経営権や株式、資産、取引先との関係、従業員との信頼関係など、さまざまなものを引き継ぎます。そのため、実務上は「事業承継」という言葉を使うのが一般的です。

事業承継の現状と動向を正確に把握する

このセクションでは、日本の事業承継問題の全体像を、最新の動向に沿って整理します。

後継者不在率は改善傾向だが、依然として高い

帝国データバンクの2025年調査では、日本企業の後継者不在率は50.1%となり、7年連続で改善傾向が続いています。以前に比べると、官民の相談窓口や支援制度の整備により、後継者問題への対応は少しずつ進んでいるといえます。

一方で、依然として約2社に1社が後継者不在の状態にあります。後継者不在率が下がっているからといって、事業承継の問題が解決したわけではありません。

経営者の高齢化は続いている

中小企業白書2025年版では、後継者不在率は減少傾向にある一方で、中小企業の経営者年齢は依然として高く、60歳以上の経営者が過半数を占めているとされています。

つまり、後継者不在の問題は改善しつつあるものの、経営者の高齢化という構造的な課題は残っています。事業承継は「いつか考えればよい話」ではなく、早めに準備を始めるべき経営課題です。

第三者承継・M&Aという選択肢も広がっている

近年は、親族内承継だけでなく、役員・従業員への承継や、第三者承継としてのM&Aも選択肢として広がっています。

事業承継・引継ぎ支援センターにおける令和6年度の第三者承継の成約件数は2,132件となり、過去最高を更新しました。中小企業にとっても、M&Aは一部の大企業だけの話ではなく、事業を次世代へ残すための現実的な選択肢になりつつあります。

事業承継の2025年問題とこれからの展望

かつて「2025年問題」として語られてきた事業承継の課題は、2025年を過ぎれば終わるものではありません。後継者不在率は改善傾向にあるものの、経営者年齢は依然として高く、事業承継は今後も長期的に向き合うべき構造的な課題です。

特に地域の中小企業では、後継者不在のまま廃業を選ぶケースもあります。相談できる専門家が身近にいるかどうかが、事業を残せるかどうかの分かれ目になることもあります。

事業承継の3類型・パターンを整理する

このセクションでは、事業承継の主な選択肢を整理します。

事業承継の3類型、内部承継・親族内承継・第三者承継

事業承継の方法は、大きく3つに分類されます。

類型内容主な対象
内部承継役員・従業員への承継社内に後継者候補がいるケース
親族内承継子ども・親族への承継ファミリービジネスで多い
第三者承継(M&A)第三者への売却・譲渡後継者不在の企業

事業承継と事業譲渡の違い、事業承継と買収の違い

混同されがちな用語を整理します。

事業譲渡は、会社の事業・資産・契約などを別会社へ移転する手法です。資産や契約を個別に移す必要があり、法務・税務・許認可の面で注意すべき点があります。

買収は、M&Aにおいて買い手側から見た表現です。一方で事業承継は、親族内承継・内部承継・第三者承継などを含む、より広い概念です。

事業承継それぞれの選択肢、スキームとパターン

第三者承継においても、株式譲渡・事業譲渡・会社分割・合併など、複数のスキームがあります。それぞれ税務・法務の論点や、引き継がれる資産・負債・契約の範囲が異なります。

どのスキームを選ぶべきかは、会社の状況や後継者の有無、株主構成、取引先との契約、許認可の有無などによって変わります。専門家と協議しながら判断することが重要です。

事業承継の難しさと、進まない理由

このセクションでは、事業承継がうまく進まない構造的な要因を整理します。

事業承継が難しいと感じる前に知っておくこと

事業承継が難しいと感じる要因はいくつかありますが、主なものは「誰に相談すればいいかわからない」と「何から準備すればいいかわからない」という2点に集約されます。

その「最初の相談相手」になれる存在として、顧問先を持つ士業や専門家には大きな役割があります。経営者にとって、普段から接点のある専門家は、事業承継を相談する第一候補になりやすいからです。

事業承継の課題と問題、経営者が抱える本音

中小企業経営者が事業承継を考えるとき、心理的なハードルになるのが、「従業員や取引先に何と言えばいいのか」「第三者に会社を渡して本当に良いのか」という不安です。

一次相談の段階で、こうした本音を引き出せるかどうかが、課題整理の分かれ目になります。

事業承継が進まない理由と最初の一歩

事業承継が進まない大きな理由は、最初の相談をしないまま時間だけが過ぎてしまうことです。健康や体力の衰え、引き継ぎのタイミング、後継者候補の不在などが重なると、能動的に準備できる期間はどんどん短くなります。

早期のアクションが重要な理由は、ここにあります。

事業承継を学びたい人へ、情報リソースを整理する

このセクションでは、士業や専門家が事業承継を体系的に学ぶためのリソースを整理します。

事業承継の本・おすすめ書籍

入門資料としては、中小企業庁が公表している「中小M&Aガイドライン」が実務的です。無料で確認でき、スモールM&Aや第三者承継の基本を押さえるうえで参考になります。

また、スモールM&Aや事業承継に特化した市販書籍も複数あります。最初は実務の全体像をつかめる入門書から読み始めると、理解しやすくなります。

事業承継の講座・セミナー・勉強会

事業承継関連のセミナーは、中小企業庁・商工会議所・専門家団体・民間の勉強会などで開催されています。オンライン形式で参加できるものも増えており、本業の合間でも学習機会を確保しやすくなっています。

事業承継の通信講座・資格で学ぶ選択肢

独学のモチベーションを維持するのが難しい場合は、通信講座や資格学習の仕組みを使うのも実務的です。期限やカリキュラムがあることで学習ペースを作りやすくなるため、忙しい本業と並行して学びたい方にも向いています。

士業・専門家が事業承継を学ぶべき理由

事業承継は、税務・法務・財務・労務・不動産・許認可・M&Aなど、複数の専門領域が関わるテーマです。そのため、すべてを一人で解決する必要はありません。

しかし、顧問先の社長が最初に相談する相手は、必ずしもM&A専門会社や弁護士とは限りません。普段から接点のある税理士、行政書士、社会保険労務士、中小企業診断士などに、最初の一言をこぼすことがあります。

そのときに「それは専門外です」と終わらせるのか、「まずは状況を整理してみましょう」と受け止められるのかで、顧問先との関係性は大きく変わります。

事業承継の専門家になる第一歩は、すべての手続きを自分で行うことではありません。

親族内承継・従業員承継・第三者承継の違いを理解し、経営者の悩みを整理し、必要に応じて適切な専門家につなげられるようになることです。

事業承継に関わる専門家になるための最初の一歩

このセクションでは、事業承継の専門家として動き始めるための具体的な取り組みを整理します。

事業承継を学ぶことで顧問先との会話が変わる

事業承継の全体像を整理するだけでも、社長の「後継者がいない」「会社をたたもうかと思っている」という言葉に対する関わり方が変わります。

「少し整理してみましょう」と言えるだけで、相談の入口を作ることができます。顧問先からの信頼のされ方も、大きく変わるはずです。

M&Aコーディネーター資格について詳しく見てみる

M&Aコーディネーター認定講座(ma-shikaku.com)では、事業承継M&Aの一次相談窓口として必要な知識を体系的に学べる設計になっています。eラーニング形式のため、本業のすき間時間にも学びやすい講座です。

まとめ

本記事では、事業承継の意味・読み方・現状・種類を整理しました。

  • 事業承継の正式な読み方は「じぎょうしょうけい」で、表記は「事業承継」が一般的
  • 事業承継には、内部承継・親族内承継・第三者承継の3類型がある
  • 後継者不在の企業では、第三者承継やM&Aが重要な選択肢になる
  • 事業承継問題は2025年以降も続く、長期的な構造課題である
  • 一次相談を受けられる専門家になることが、地域の士業や支援者に求められている

顧問先の社長に「これは一度整理した方がいい」と言える専門家になるための知識を、ステップバイステップで身につけていきましょう。